【309】
失敗した失敗した…。
期待していた
ママ手作りのおぜんざいッ。
コトもあろうか
うっかり
焦がしてしまうなんてッ。
「おいしい塩昆布も
お餅だって用意したのに…」
脱力する家族の姿に
責任を感じてか
「……」
ママがなかなか
キッチンから出てこない。
「…母さん?
俺、小豆買ってこようか?」
見かねたセイが
キッチンをそっと覗き込むと
「いいのッ!
全てはママが
イケないんだからッ」
ママが悲壮な顔して
キッチンから
出てきたかと思ったら
バタン!
エプロンをつけたまま
外に飛び出していった。
キッチンに残されていた
置き手紙。
【失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した】
ただ反省のひと言を
ひたすら書き連ねていて。
「あのママが
まさか、ここまで
思いつめていたなんて」
ママのコト
脳天気な人間だから、って
油断していたよおおおお。
「トーコ、お前が
イヤミったらしく
塩昆布を冷蔵庫に
片づけたりするからだ!」
「セイの溜息だって
失敗したママには
メガトン級の破壊力が
あったと思うッ!」
「まあ、ふたりとも
落ち着きなさい!」
「パパだって
おもむろに
新聞なんか読み出して
同罪なんだからッ!」
みんなで責任を擦り合い
「……」
「……」
「……」
ママをメチャクチャ
心配したのに!
30分後、ママってば
「スーパーで小豆の特売
やってたのよッ!」
笑顔のご帰還ッ。
「こんな手紙、残して
出て行っておいてッ
ママってば
信じられないッ!」
怒りマックスな
家族の様子に
「やだ、その手紙
ちゃんと2枚目も
読んでくれたんじゃ
なかったの?」
ママの平和な眉が
ハの字に歪むッ。
【さて。この手紙には
失敗した、と何回
書かれていたでしょうか?】
…ママは
やっぱりママだった。
とことんトーコッ☆【309】
≪〜完〜≫
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