【314】

似合いのふたり。

セイとのデートの帰り道。

駅前のケーキ屋さんの
ショーウィンドウに
【本日一周年】の文字を
発見!

「ねえ、ねえ!
ケーキどれでも15%オフ
だって!」

「…言っておくが
俺はセール中の店なんぞには
絶対に入らないからな!」

「わかってるよッ
だから、ほらッ、ね
先立つモノさえ戴ければ」

「……」

冷ややかな目を向けながら

私が出した両手に
セイが一万円札を置く。

「釣りを誤魔化されるなよ」

「ケータイの電卓で
計算するからッ」

「それから…」

「買い物は5分以内に
済ませろ、でしょ!
わかってるからッ」

面倒臭そうにしている
セイを残し

私は勇んで
店の中に突入だッ!


「うわああああ。
美味しそおおおおお」

家族の好きなケーキを
チョイスして
レジでお金を払っていたら

「店の前で待ってるのは
彼氏かい?」

若いオトコの店長さんが
私に声を掛けてきた。


「なかなか
似合いのふたりじゃないの」

なんて
耳打ちしてくるモノだから

思わず耳まで赤くなるッ。


「似合いのふたり…」

そんな風に言われたの
始めてかも。


「これ、一周年の記念の
ラブ・クッキー
彼氏と仲良く食べてね」

…それが
リップサービスだと
わかっていても

やっぱり嬉しいッ。


「ありがとうございますッ」

天にも昇る気分で
私はお店を後にした。

のにッ!!!!

セイってばッ

「お前、あの店員と
何、話してたんだ!」

店から出てきた私のアゴを
捕まえて

ガクガクガク、と乱暴に
縦に、横にと振り回すッ。


「ちゃんと5分以内で
出てきたしッ!

おつりだって
ちゃんと貰ったよッ!」

なのにッ!

「セイは何がそんなに
気に入らないのかなッ」

「お前の顔に
決まってるだろ!」

むむむむむッ。

「私の顔なんて
何を今更ッ!」

「お前は俺の前で
あんなハニカミ笑顔
見せたコトなんか
なかったよなッ!」

え?

「あのオトコに
口説かれでもしたか!?

ケーキ屋の客商売も
ホストばりに大変だな!」

セイが私の手から
乱暴にケーキの紙袋を
取り上げた。


「…セイと私のコト
似合いのふたりだ、なんて
言われちゃったから

私ってば、つい
嬉しくなっちゃって」

「え」

「だから、その…」

「……」
「……」

「…ふん!、なら、いい」

セイが私の手を握り
足早に歩き出す。


夕暮れどきの商店街が
セイの頬と同じ色に
染まっていた。





とことんトーコッ☆【314】

≪〜完〜≫



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