【321】
威厳ある後輩指導。
「女子新体操部。
あいかわらず活気があるな」
男子体操部の1年生部員を
ひきつれたシンスケが
同じく
女子新体操部の1年生の
指導をしていた私に
声を掛けてきた。
「この時期になっても
リタイアする1年生が
出ないのは
トーコ達2年生が
しっかり
面倒を見てるからだよな」
なんて
シンスケってば
自分の後輩達の前で
手放しで褒めてくれて。
でへへへへ。
「ウチはのびのび
やらせてるだけだよ〜」
悪い気はしないッ。
「俺、トーコと違って
褒めるの苦手だからさ」
「あはははは」
シンスケは
体操のコトになると
容赦ないからなあ。
ウソがつけないタイプ
だもんね。
「ウチも
シメなきゃいけないときは
ちゃんとシメるよ。
先輩としての威厳は
ちゃんと保たなくちゃね」
私が親指を立て
笑顔で胸を張ると
「おおおおお」
さすがトーコ先輩
かっこいい、と
男子体操部の1年生は
本当に素直ないい子達ッ。
「トーコ先輩〜ッ」
「ほら、トーコ
後輩が呼んでるぞ」
「やだなあ。
私がいなきゃ練習ひとつ
続けられないんだから」
私が声のする方に
振り返ると
「こっちに戻るとき
ついでに飲み物
とってきてくださ〜い!」
「……」
「……」
「……」
このタイミングで
私に恥をかかせるとはッ。
「…我が後輩ながら
いい度胸だなッ」
思わず
こぼれ出てしまう本音に
ハッ!
男子体操部1年生部員の
視線が
背中に突き刺さるッ。
やばい!
「あはははは。
みんな疲れてるからね〜。
いつもはこんなじゃ
ないんだけどね〜」
“理想の先輩”としての
威厳を保とうとする私に
「トーコ先輩って
いかなるときも
後輩のいいとこ探し
褒めて伸ばすタイプ
なんですねッ」
男子体操部1年生部員の
目が輝いたッ。
「え」
“いい度胸”って
けっして
褒めてはいませんけどッ。
「…コイツらのこの鈍感さに
助けられてる毎日だよ」
シンスケがそっと
私だけに耳打ちした。
とことんトーコッ☆【321】
≪〜完〜≫
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