【325】

5千タイトル見放題?

「今ならなんとッ!
五百円で
映画5千タイトル見放題ッ」

「……」

「1タイトルあたり
わずか約0.5円
なんだよッ!」

「……」

こんなお得なチャンス
そうそうないよねッ。

「私のケータイでは
利用できないサービスだけど
セイのならできるよねッ?」

「……」

「ね、ね、ねッ!?」

「……」

キャンペーンのチラシを
ピラピラと
私はセイに
ダメ元でアピールする。


「ほらッ!
セイの好きそうな
フランスのマイナー映画も
揃ってるしッ」

「お前が知らないってだけで
俺の好みをマイナー扱い
するんじゃない」

「えっと、あはッ。
おっしゃる通りでッ!」

「……」

「てへッ?」

「……」


「…だいたいだな!

そもそも
お前が24時間不眠不休で
30日間見続けたとして
何タイトル見れると
思ってるんだ?」

「えッ」

…と、お〜…。

「1本2時間としてえ」

あ、特撮とかだと
30分とかもあるしッ。

この間観に行った映画は
3時間近かったっけ?

「あれ?、れれ。あれッ?」

チラシの余白に
根拠のない不毛な数字を
羅列する私を見て

「…質問を替えよう」

セイが
深い溜息をついていた。


「映画なんてのはな
でっかいスクリーンで見て
ナンボのモンだが

そんなちいさい画面でも
お前が観たいと思う映画が
何本あるんだ?」

「えッ。あ。え〜っと。
何かあるんじゃないかなッ」


「…話にならないな」

リビングを出ようとした
セイの背中をグイと掴んで

「ほらッ!
こういうのってさッ。

今まで知らなかった
いい映画に出逢うキッカケに
なるかも
しんないじゃない?」

私は懸命に食い下がるッ。

「……」
「……」

「…お前にしては
珍しく正論ではあるな」

!!!

「でしょおおおおおおお!」

思いも掛けぬセイの同意!

私は
我を忘れて舞い上がった。


「だがな」

「え」

「いい映画に出逢う為だけに
無駄に浪費しようとしている
お前の時間を

バイトに充ててたら
いくら稼げるか
わかってる?」

「えっと。

ボック☆の時給2時間分に
観る予定の映画の数を
掛けたら…ってッ

ちょっと待ってッ」

私は再びテーブルの上の
チラシに向かう。


…5が繰り上がって
3になって、えっと…」

「……」

「あ、ちょっと待ってッ!
今、ケータイ持ってきて
電卓で計算するからッ」

「……」

「あれッ。
どうして小数点ッ。

ん?
マイナス3万円は
おかしいよねッ

どこか
押し間違えたのかなッ」

セイのパーカーの
裾を掴みながら

私はケータイの電卓と
ひたすら地道に格闘した。


「…もういい」

「よくないからッ!
もう少しで答えが
出そうなんだからッ」

「……」


「出たッ!
キリのいい230円ッ!」

「…いろいろ俺が悪かった」





とことんトーコッ☆【325】

≪〜完〜≫



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