【326】

聴こえな〜い。

「アムちゃんの
コンサートチケット
またハズレちゃってさッ」

最後の望みは
セイさまの裏コネクション。

「だからねッ
アムちゃんのチケット
何とかならないかな〜
なんてねッ」

ヘッドホンで
音楽を聴きながら
レポートを
プリントアウトしていた
セイに

ダメ元でお願いしてみるッ。


「……」

「ホンットにお願いッ」

「……」

「お願いしますッ」

「聴こえな〜い」

「……」

「聴こえない」

「何も言ってないん
ですけれどッ」

「聴こえない」


「……」

忍び難きを忍びッ
耐えがたきを耐えッ

セイに
アタマを下げていると
ゆ〜のにッ!

そんな態度って
アリなんですかッ。


「ちょっと
そのヘッドフォン
外しなさいよッ!」

セイのヘッドホンに
伸ばそうとした私の手を
簡単に振り払い

「……」

セイは私を邪険にした。


「むむむむむうううう」

ホントは
聴こえているクセにッ。

あくまで
私の声など届いていないと
シラを切り通すつもりなら

こっちにも考えがあるッ。


「セイの大好きなチーズ
食べちゃうからねッ」

「聴こえない」

「魚の目玉、魚の目玉ッ」

「聴こえない」

私の攻撃にも
セイは顔色ひとつ変えずに

プリントアウトされた
レポートを
チェックしていて。


「…なんだ」

本気で聴こえてないんだ…。


「ふうううう…」

ひとりで一生懸命
声張り上げてさ。

「なんか私バカみたい…」


がっくりと
敗戦投手さながらに
うな垂れて

セイの部屋を
出ようとした私の腕を

「おいッ、ちょっと!
お前はその程度で
引き下がるのか!?」

セイが自分の懐に
私のカラダを
引き寄せようとして

ヘッドフォンの端子が
勢いよく空を泳いだ。


「あ」
「え…」

「……」
「……」

ステレオの音量ッ
まさかのゼロッ!?

ってッ

「もしもしもしッ!?」

私のお願いを
聴きたくないからって

それは、ちょっと
酷くはナイですかッ。


「…ったっく、もう。
お前って、つくづく
根気のないヤツだな」


「何よッ!

どんなに頑張っても
私のお願いなんて
聴いてくれる気なんて
ないんだってコトなら

よおおおおっく
わかりましたからッ」


「わかってねえな!」

「何がよッ!」

怒りに任せて
セイのヘッドホンに
手を掛けた私を

セイが力強く抱き寄せる。


「どうせ最後は無理難題を
押しつけられるんだ。

せめて
お前に懇願される悦びくらい
じっくり味あわせろよな」





とことんトーコッ☆【326】

≪〜完〜≫



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