【331】

チーズスフレは…。

パパの出張土産の
チーズスフレ。

4人家族に5個入りなんて
パパのバカッ!

「セイはチーズが好きだから
気に入って
くれるんじゃないかな、と
思ってね」

「私だってッ!
ここのスフレは
一度は食べてみたかった
憧れでッ」

「じゃ、1個食べれれば
本望よねえ?」

パパもママも
セイばっかりヒイキしてッ。

「父さん、これ
すっごく気に入ったよ」

セイってば
天使な笑顔で

自分のお皿に
2個めのチーズスフレが
載せられるのを
余裕然、と待っているッ。


「じゃあ、ここはふたりで
仲よく半分こしたら?」

「この店のチーズスフレは
最初のひとさじを
入れる瞬間が
たまんないんだからッ」

「あら、まあ、そうなの?」

ママは全然わかってないッ。

「トーコがそんなに
チーズスフレ好き
だったなんて
知らなかったから

トーコに申し訳ないコト
しちゃったなあ」

ってッ!

パパッ、それは
今回は私に諦めろ、との
意味ですかッ!

たかがチーズスフレ!
されどチーズスフレ!!

残り1個の所有権を賭けて
ここは引くワケには
参りませんッ。


「セイは
そうやって黙っていても
最終的には
自分の手に入るんだ、って
思ってるんで
しょうけれどッ」

「……」

昔から、いっつもそう!

自分の意思とはカンケイなく
与えられるのが、当然
みたいな、その態度ッ!!!

「セイは昔から
自分の欲しいモノは
何でも
手に入れてきたんだからッ

そろそろ
譲るってコトを覚えても
バチは当たらないと
思うんだけどなッ」

「……」

「何よッ、その目はッ!」

「……」

「昔のコトを忘れたとは
言わせないからねッ」


「…自分のオネショを
俺に罪をなすりつけようと

隣りで眠っていた俺の
パジャマに
花瓶の水を
ぶっ掛けたとか?」

「……」

「金魚を胃から出す
マジックに失敗して

自分が食べた金魚を
俺が食べちゃったって
母さんに
報告したコトとか?」


「…今すぐ忘れてッ」

「では、遠慮なく」


セイが私の目の前で

これ見よがしに
チーズスフレに
スプーンを入れ

「ほら、あ〜ん」

チーズスフレが
ふんわり
私の口の中で溶けて

なくなった。


「おお、いい笑顔」

「……」

「動物園で餌付けコーナーに
人気が集まるのも
わかる気がするな」





とことんトーコッ☆【331】

≪〜完〜≫



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