【337】

レベルを替えよう。

「じゃ、次。

これは小学生レベルの
科学の問題だからな!」

セイは私に
“小学生レベル”という
単語を
また強調して

科学の問題を出題する。


「片栗粉にヨウ素を掛けると
青紫に変色する。

このコトから何がわかる?」


「片栗粉は…」

「…片栗粉は?」

「ヨウ素が苦手?」

「……」


「片栗粉は我慢強い…?」

「……」


「片栗粉は…」

「片栗粉の気持ちは
もういいから」


「……」
「……」

セイは私の答えに
眉ひとつ動かさない。


「……」
「……」

「……」

またしても
答えに詰まって

私の部屋の空気が
一段と重くなる。


「トーコが
自信を持てるよう

もっと出題の仕方を
考えてやったら
どうかしら?」

コーラを持って
部屋を訪ねてきたママの
助け舟に

「…そうだな。
お前のプライドも
大事にしてやらなくちゃな」

俺が悪かった、と

セイが私のノートに
大量の“H”と“O”を
殴り書き。


「これはアミロペクチンの
分子構造だが…」

「……」

「デンプンの直鎖部分は

グルコースがα1-4結合で
連なったもので

見ての通り
分岐は直鎖の途中からで

グルコースのα1-6結合に
よるんだが…」

「……」

「片やアミロースは
ほとんど分岐を持たないが

アミロペクチンは平均で
グルコース残基
約25個に1個の割合で

α1-6結合による
分枝構造を持っていて…」

「……」

「あ、ちなみに
直鎖部分の長さは
18〜24残基

分岐間は5〜8残基の
間隔があるんだが

これは…」


「あのッ!」


「…なんだ?」

「それって、何?」

日本語、だよね?


「何?、って…。

ヨウ素デンプン反応の
出題の仕方を
替えてみたんだが?」


はい?


「だってさ。

どうせ答えられないなら

難しそうな問題を
間違った方が

お前だって
悔しくないだろう?」


…ありがとう。





とことんトーコッ☆【337】

≪〜完〜≫



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