【360】
相対性トーコ。
暖かい部屋の中から
シンシンと降り積もる雪を
眺めながら
「ゆっくり過ごす時間は
速く流れるよね」
ホットミルクを片手に
幼稚園児のセイが
静かに呟いた。
「ゆっくりなのに
早いなんてッ
セイってば、本当に
おバカさんなんだからッ」
ドーナツ片手に
やってもやっても終わらない
算数の宿題と格闘しながら
「幼稚園児って
ホント、お気楽ッ」
傍で勉強をみてくれていた
パパに
小学生の私は
同意を求める視線を
投げ掛ける。
なのに。
「いやあ。
凄いよ、さすがセイ」
「ええッ?」
「トーコに理解するのは
難しいかもしれないが
“ゆっくり過ごす時間は
速く流れる”
この年齢で
相対性理論の本質を理解して
宇宙の真理を説くなんて」
パパが深く感動していた。
「……」
何だかよくわからないけれど
どうやら
セイの言ったセリフは
オトナを
ビックリさせるくらい
凄いコトらしい。
「トーコ。宿題は出来た?」
ママが
買い物から帰ってきた。
よしッ。
私もママに
同じコト言ってみて
凄いって褒めて貰おうッ。
「トーコ、宿題は…」
「あのねッ、ママッ」
ママの腕を引き寄せて
「ゆっくり過ごす時間は
早く流れるよね」
私はそっと耳打ちする。
「……」
「ママ?」
「宿題もせずに
ゆっくりと
過ごしていたなんて!
おやつなんて
与えるんじゃなかったわ!」
とことんトーコッ☆【360】
≪〜完〜≫
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