【361】

自分の手が汚れると。

ケンちゃんが
ドーナツを食べて
油のついた指を

自分のシャツで拭ってる。


「…コイツに
ドーナツをくれてやったのは
どいつだよ」

セイの目があきらかに
私を責めていた。


「そッ、それくらいッ!

オトナなんだからッ
大目に見て
あげなさいよねッ!」


自分だって
生ハムやらチーズやら

いっつも手掴みで
食べてるクセにッ。


「くそッ。このダケンが!

俺の読んでいる雑誌の上に
食べこぼすんじゃない!」


雑誌を高々と持ち上げて

セイが長い足で
ケンちゃんを遠ざけている。


「セイはちょっと
子ども相手に
神経質すぎるよ。

もう少し寛大なココロを
持って…」


濡れタオルを手渡そうと
踵を返したその瞬間ッ


むにゅ。


私のスリッパの下で
嫌な感触ッ!


「…何、これッ」


「さっき落とした
生クリーム入りの
ドーナッツだなッ」


潰れたドーナッツを
私のスリッパの裏から
剥ぎ取って

「まだ食えるぞッ」

ケンちゃんが私の手に
しっかりと
握らせたッッッ!!!


「あのねええええ!
ケンちゃんッッッ!!!」

さらなる生クリームの応酬に

「どうしてッ!

こんなトコロに
食べこぼしたままに
しておいたのかなッ!?」

思わず
私の声もおおきくなる。


「…俺の雑誌のときは

“寛大なココロ”とか
偉そうなコト
言ってたクセに」


セイの冷ややかな視線が
私の背中に突き刺さりッ


「それはッ!

物事には限度というモノが
あって…」


言い訳する私を見上げる
ケンちゃんのデッカイ眼が
私を黙らせた。


「キレイ事を言うヤツ程

自分の手が汚れると
もろいよなあ…?」


ケンちゃんの捨て台詞に

セイがふたつ折れになって
笑っている…ッ。





とことんトーコッ☆【361】

≪〜完〜≫



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