【408】

壊された哀しみ。

幼稚園バスの停留所。


バスから降りてきた
ケンちゃんに
駆け寄ろうとした私の足元で

バキッ、と嫌な音がした…。


「ああ、ボクのッ!」

「えッ」


路上の真ん中に
放置されていた布袋の中から
現れたのは

見るも無残な、お弁当箱ッ。


「ごめ…ッ」


「買って貰ったばっかの
ヤツだろ?」

「限定品だあ」

「可哀そう」


集まってきた幼児達の目が
冷ややかに私を責めていた。


「…ちゃんと同じの
探し出して買ってくるから

許してね」


私が肩を落としていると

「バスを降りた途端
油断して

こんなトコロに放り出した
この子が悪いんです」

お弁当箱なら
他にもありますから、と

保護者さまの笑顔が
慈悲深いッ。


なのに


「おいッ。
それはナイんじゃねえ?」


ウチのケンちゃんが
異議申し立てッ

待った、を掛けるという

まさかの展開ッ。


「弁当箱を壊された
コイツの哀しみは

いったいどこに昇華すれば
いいと言うんだッ」


「あのね、ケンちゃん…」


「怒ってるのが
幼児だったからって
ナメてんじゃないッ

ヤクザなら
家族親戚みんなのとこへ
行ってるレベルだぞッ」


…ケンちゃんは
ヒトの痛みがわかる
いい子なんです。


いい子なんです。





とことんトーコッ☆【408】

≪〜完〜≫



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