【418】

「好き」は疑うのに。

トイレのドアノブに
手を掛けた私に

「なあ、トーコ?

お前、俺のコト
マジで好き?」

セイが深刻な顔で
近づいてきた。


「え?」

「どうなんだよ?」

「…好き、だけど?」

「ウソばっか」


いったい何がどうしたと
ゆ〜んだかッ。


「……」
「……」


なんだか
面倒くさい雰囲気に
なって来たぞ。


「ちょっと先にトイレに
行ってもいいかな?」

トイレのドアを
開けようとした
私の肩を掴み

「好きじゃないなら
そう言えよ!」

どんッ!

セイが
私を壁際に追い詰める。


「…だから

好きだ、って
言ってるじゃない…?」


「コレでもか!」


私の目の前に

小学生のときに
書いたと思われる
私の夏休みの絵日記が

突きつけられた。


「見てみろよ!

日記の半分以上が
俺の悪口で埋まってる!」


そんなモノッ
いったいどこから
発掘してきたのかッ

このオトコッ。


セイの肩越しに
コチラを覗き込んでいる
ママと目が合い

ママが逃げたッ!


…発掘したのはママッ
アナタでしたかッ。


「嫌いなら嫌いと
ハッキリ言えよ!」

しつこく食い下がろうとする
セイを

「じゃあ、嫌いでッ!」

チカラいっぱい押し返すと

思いの外アッサリと
私に道が譲られる。


「……」
「……」


「…トイレ限界だからッ」

私は急いで
トイレの中に逃げ込んで

勢いよくドアを閉めた。


「…あ〜…」

セイのさっきの顔。


“好き”ってコトバは
疑うクセに

“嫌い”ってコトバは
簡単に信じるんだね。


カラカラカラ。

カラカラカラ。

カラカラカラカラ。


トイレットペーパーを
引っ張りながら

「う〜〜〜〜ん」

不用意過ぎた
セイへのひと言を
後悔する。


「いつまで
籠城しているつもりだよッ」


ドゴッ、ドゴ、ドゴッ!

トイレのドアを
激しく蹴りあげる音が

「…ちくしょう。何でだよ」

静かになった。


「……」
「……」


コンコン。

今度は私が
内側からドアを叩けど

「……」

返事はナイ。


「あのね、セイ?」

「……」

「小学生の頃は

みんなから大切にされている
セイに

私、ヤキモチばかり
妬いていたから…」

「……」

「嫌いだ、なんて
ココロにもないコト言って
ごめんね」

「……」


「……」
「……」


コン。


ドアの外から

ひとつ

やさしくノックする音が
聞こえてきた。





とことんトーコッ☆【418】

≪〜完〜≫



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