【431】

あ〜ん、して。

「それ、美味しそうだね」

ひと口、頂戴と

セイのチーズケーキに
フォークを突き刺そうとした
私の手を払いのけ

「お前のひと口は
ひと口じゃ
済まないだろう!」

セイが私に
睨みを効かせるッ。


「…そう言うと思ったッ」

最初から
期待なんかしていません
でしたよ、と

そっぽを向く私の口の中に

「和栗のケーキが
食べたい、っつって
自分で選んだんだろうが」

セイが
私のケーキに載っていた
和栗を

乱暴に押し込んできた!


「どうだ、美味いか?」

「……」


一番最後に食べようと
思っていたのにッ。

「もぐもぐもぐ…」


悔しくて、でも美味しくて。

「もぐもぐもぐ…」


ひたすら未練がましく
和栗を口の中で
噛み続けていたら

「ほら本体も
お前に食べられるの
待ってるぞ」

セイがまたしても
自分のスプーンを
私の口の中へと
割り入らせてくるッ。


「もおおおお」


でも、美味しい。

「もぐもぐもぐ…」


ほっぺたが
とろけ落ちそう。

「もぐもぐもぐ…」


「そうか、美味いか」


頬杖をつきながら

満足そうにする
セイの目が

いつになく穏やかだ。


「ハッ!」


これはッ

セイのこの目はッ!


まさに

セイが動物に
エサを与えているときの

あの眼差しッ!


「…もぐもぐぐ」

「ほら、もっと喰え」


「……」

気をつけよう

セイの
甘いコトバとやさしい目ッ。


「…なんかそういうの
傷つくんだけど?」

「何だ?」


「なんでもありません」

セイがスタンバイしていた
次のひと匙を
阻むようにして

私は隙だらけな
セイのチーズケーキの皿を
奇襲するッ。


「あッ、トーコ、お前ッッ」

慌てて
阻止しようとする
セイの口の中に

「むぐッ」

私は
すくい取ったチーズケーキを
突っ込んだ。


「…もぐん」


私の行為に
セイの動きが止まる。


「へっへーッ
仕返しだもんね〜」


セイの油断をついて
勝ち誇る私の前で

セイが
笑みを噛み殺しながら
ちいさく口を開け

次のひと匙を
期待して待っていた。





とことんトーコッ☆【431】

≪〜完〜≫



この作品をお読みになった
感想をお寄せください。


下記の感想の中から
ひとつ選び

【いいね!】ボタンを押すと

お楽しみスペシャル画像が
ご覧戴けます。


絵柄は予告なく
気まぐれに更新されます。



特に感想はありません。
次の話も期待しています!
今回の話は特にお気に入りです!