【435】
常識を語れッ。
注文した料理が
なかなか来なくて
「ここの料理人は
麺棒の材料を調達しに
森にでも行ってるのかよ〜」
空腹に耐えかねたセイが
いつになく苛立っているッ。
パパがくれた
使用期限が今日までの
中華の無料券。
ナンノを誘おうと
思っていたのに
「俺が一緒に行く」
強引についてきたクセに
文句ばかりッ。
「…まだ席について
3分も経ってないよ」
「店の前で1時間
待たされた」
セイが割り箸で
水の入ったコップを
乱暴にかき混ぜるから
「ちょっと、セイッ」
テーブルの上が水浸しだ。
「一緒にいる私まで
常識がナイと
思われちゃうじゃないッ」
セイから割り箸を
取り上げようとした
私の目の前に
「常識、って何だ?」
セイが割り箸を
突きつけるッ。
「すべての人間に共通する
認識など
この世に存在するなどと
思っているのか?」
“俺こそが法律”と
言わんばかりの
圧倒的な俺様オーラッ。
「…あるんじゃないかな」
「へ〜え!
教えて貰おうじゃないか!
その“絶対的な常識”
とやらを!」
ぐいい、とセイが
私の顔を覗き込んできた。
「誰もが納得し
そうだよな、と
同意するであろう常識…?」
「そ」
濡れた割り箸を
私の前でチラつかせながら
サディスティックな瞳が
私を追い詰めるッ。
「ほら、どうした?」
「……」
悔しいッ。
悔しすぎるッ。
せめて一矢報いたいッ!!!
「ほら、ほら、ほら」
私を急かすように
目の前でぐるぐると
割り箸の先が回されるッ。
誰もが納得できる常識
誰もが納得できる常識
誰もが納得できる常識
何か何か何か何か何か何か!
「……い」
「え?」
「割り箸は目に入れると
たいてい痛いッ!」
「……」
「……」
「……」
勝ったッ。
とことんトーコッ☆【435】
≪〜完〜≫
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