【441】

輝いているッ。

ナンノと一緒に
駅構内を歩いていたら

案内板を見ながら
後ろに下がってきた
おばあちゃんと

ぶつかった。


「ああ、ごめんね。
お嬢ちゃん」


なんだか
田舎のおばあちゃんに
声が似ているな。


このゴブラン織りの
ショッピングカートなんて

ウチのおばあちゃんも
持っていそうだ。


だけど。


「……」

何だろう、この
派手な色のパーカーは。


襟元は赤く裾はピンクの
グラデーション。


楕円形の黒い点々が
襟元から肩口に掛けて
ランダムに散らばっている。


捲り上げた袖口から
覗いているのは

緑と黒のストライプ…。


「スイカだね…」
「スイカ、だね」


珍しくナンノと
意見があった。


「ちょっと
案内板の文字との距離感が
うまく掴めなくてね」

「……」
「……」


この派手な出で立ちの
おばあちゃん

どうやら老眼鏡を忘れ

離れた位置から
案内板の内容を
把握しようとしていた
らしい。


おばあちゃんの
手に握られていた
コピー用紙に
つけられていた
赤いシルシを

目ざとく見つけた
ナンノが

「お探しの劇場なら
南口を出てスグですよ」

すかさず案内役を申し出る。


「スイカは
今日のラッキーアイテム!」

今朝のナンノのセリフが

私のアタマの中に
鮮やかに甦ってきたけれど

「ありがとうねえ」

おばあさんは
安堵の表情を浮かべていて。


「……」

慣れない駅でさぞかし
不安だったんだろうな、と
思ったら

動機はともあれ

ナンノの行為は
やっぱりグッジョブ、だ。


「この改札口を出ましたら
ですね」

「ズズ、ズイっとッ」

「左の方角へと
進んでください。

そしたら、わりとすぐに」

「ババ〜ンっとッ」

「右側に
劇場の縦書きの看板が
見えますから」

「ピュ〜ンっとッ」

「矢印の方向
右へと進みますと」

「シュルンっとッ」

「奥に階段が見えますので」

「ピョンピョンピョン」

「階段を上がった先が」


「劇場です!!」

声を揃えてサムズアップ。

改札口を出るおばあちゃんの
スイカな背中を見送った。


「いいコトをしたね」

「うん」


私達、今
とっても輝いてる。





とことんトーコッ☆【441】

≪〜完〜≫



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