いつのまにか
後ろに立っていたセイに
驚いて

学習イスから
すべり落ちそうになる。


「ノッ、ノックぐらい
しなさいよねッッ!」


「自分のオンナの部屋に
入るのに

わざわざノックなんか
するヤツなんぞ

いないだろ〜」



「親しき仲にも
礼儀ありッ、だよッ!」


「トーコのくせに
風流なコトバ知ってるのな」


「…トーコのくせにって
失礼すぎッッ!!!」


…ホントは

「自分のオンナ」って
コトバの方が

引っ掛かってたけど…。


そんな私の
びみょ〜な乙女心に

気づいてるのか
気づいてないのか。


学習イスで
体勢を崩していた私の手から

セイが手紙を取り上げた。


「これってさ。

シンスケさんには

テストに受かった後に
渡してって
頼んだんだけど」


「あはッ、あはは」

どうしたんだろうね、って

ここは
笑って誤魔化すしかないッ。


「……」

セイは私の足元に
跪くようにして

黙って
私の顔を覗き込む。


「……」
「……」

子どもが親に
諭されるときみたいに

物凄い圧迫感。


キレイなヤツには
敵わない…。

「…返すからッ」

私は封書と預かり証を
差し出して

セイの視線を遮った。


「…受け取りを拒否られても

始末に困るっって言えば
困るんだけどさ」


セイが私のオデコに
それらを押し返してくる。



「始末に困る?」


「今度は
なくさないようにって

お名前刺繍
入れて貰っちゃったから」


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