それまでは
日本の大学の研究室を
間借りして
やってるんだって

しら〜っとした顔で
セイが何気に自慢する。


週2回は
大学の研究室に通って

残りの日は
自分の部屋のコンピューターで
アメリカの大学の
通信教育プログラムを
受けていて

アメリカの大学の
卒業資格も貰えるなんて


全然知らなかったッ。


って、ゆ〜か

「どうして
そんな大事なコト

私だけが知らないのよッ!!」


「おまえが
訊かなかったからだ」


「だって…!!」


ぷ〜してるセイに
就職やら学校やら
プレッシャー
掛けたくなかったからッ

誰よりも
何よりも

どうなってるのかって
私が一番
訊きたかったけど


「気を遣って
遠慮して
あげてたんだからッ!」


「…俺のコト
ぷ〜呼ばわりしてたのは

確かこの口だと
思うんだけどなッ」


どこが
気を遣っているんだ、って

セイは
私の頬っぺたを
片手で掴んでヘコませる。


「…ゼイば
どごの大学じ通ってんど?」


「赤い門のあるトコロ」

「いだりでぃんだ!?」


「は?」

セイは私の答えに

眉間にシワを寄せながら
私の頬から手を離した。


「まさかとは思うけど

今、おまえ
何て答えた?」


「稲荷神社ッ」

「……」
「……」


セイとパパが
ふたりして脱力する。


「…トーコ。
それは赤い鳥居だろ?」

パパが苦笑した。


「そもそも稲荷神社のどこに
大学があるというんだ…」


アタマの中の配線が
連想ゲーム状態なんだな、って

親子して
哀しい目をするんじゃないッ。


パパは私の珍回答を
聴かなかったコトにするべく

話題の方向を
さりげなく変えてきた。


「大学では皆さんに
よくして貰っているのか?」

「うん。
高校の先輩が多いしね」


セイってば

そんなパパの傍に
さりげなく
笑顔で座ったりして。


相変わらず
パパにとってセイは
自慢の息子らしい。


パパの持っていた本を

「次、貸してね」なんて

優等生ぶりは
さすがだねッ。


私なんか
眼中ないってカンジで

ふたりで盛り上がっている。