「トーコも食べてみたら?」
「…遠慮しときます」
セイの味覚には
とてもじゃないけど
ついていけない。
…キッチンから
リビングのテレビが
少し覗けるんだけど
さっきから
モニターに映し出されてる
写真のマニアックなコト!
ピントが汚いバケツに
合ってたり。
ボケボケで
何が写ってるのか
判別がつかなかったり。
どれもこれも
床すれすれの
ローアングルな
写真ばっかりで。
馬に撮影を
邪魔されていたとしても
あまりにもヒド過ぎだ。
ちいさい子が書いた
ワケのわからない絵みたいで。
…普通ならこんな失敗作
さっさと
データ消しちゃうよね。
セイの価値観が
わからない。
「はいッ!
チーズ入りとんこつ!」
どごん、と
リビングのテーブルの上に
出来上がったラーメンを
置いた。
「セイってホント
とことん
マニアックだよねッ」
私のセリフに
「…トーコを
選んだコト以外
そんな自覚はないんだけど」
セイがちろ〜ん、って
私を横目で見る。
…どういう意味だッ。
私を選ぶコトが
世間から見て
マニアックな嗜好だとでも
言いたいのかッ。
チーズ入りのラーメンを
食べながら
セイは
ピントのボケた写真を
遠い目で見つめてて。
「ちいさい頃さあ。
トーコに
いっぱい意地悪されて
屋敷の床に
転がされては
俺、よく
泣いてたんだよね」
え…。
「ナミダで視界が
ボケボケで
こんなカンジで
イタイケな幼い俺の目に
映ってたんだよなあ」
…って、おいッ。