中から声が
聞こえるから

起きているんだって


「俺、ワケがわからずに
ドアを必死で叩いてたら

母さんがやっと出てきて」


パパは布団を被って
寝たフリをしていたのだと
セイは言った。


「いつもなら真っ先に

どうしたんだ、って

飛び出してきてくれる
父さんなのにさ」


後から考えたら

「布団から出れない
生理的な事情が
あったんだよな」


セイが思い出し笑いをする。


「…ホントに寝てたかも
しれないじゃないッ」


「俺、父さん達のベッドに
入れて貰うつもりで
部屋に行ったのに

母さんはトーコのベッドに
俺を押し込んでさ」


トーコといっしょなら
悪い夢も見ないわよ、って


強引に

私のベッドに
セイを寝かしつけて
いったのだと言う。


「覚えてない?」

「覚えてるワケ
ないでしょ!」


「…俺、あの日のコト

すっごい
よく覚えてるけどなあ」


セイはクスクスと
笑いながら

私をベッドに横たわせた。


…セイはみょ〜なコトばかり
よく覚えてるんだから。


「こうやってさ。

トーコの背中から
手を回してさ」


セイは上半身ハダカの私を
背中から抱きしめてくる。


「暑苦しいから
くっつくな、って

何度も何度も
トーコに
引っぺがされるモンだから」


大泣きしたら

「ウルサイって
ぬいぐるみで叩かれて」


気がついたら
朝になってて


「トーコに
ぬいぐるみ代わりに
抱っこされてた」


…何か記憶の端に
うっすらと覚えがあるような。


ぬいぐるみと間違えて
抱っこしてみたら

案外ヒンヤリとしてて


…セイって
抱き心地がよかったんだよね。