そんな私の黒い腹に
気づきもせず
「じゃ、ママも選んでいい?」
ママがアルバムを
ご機嫌な様子で
ページを捲ってる。
私はそんなママを
横目で見ながら
ある写真のネガを探した。
…とっておきの
セイの写真。
私の切り札。
ベランダから漏れてくる
陽射しに
ネガをかざして
チェックする。
「これと、これと
これもいいわねッ」
「ママ、アルバムから
剥がしちゃったら
どこに貼ってあったのか
わかんなくなっちゃうよ!」
ママは整理整頓とか
後片づけが苦手なヒトで。
出すだけ出しても
いっつも
片づけられないでいる。
アルバムだって
こうして整理できているのは
パパがマメなヒトだからで。
ママに
この写真を元通りに貼って
片づけておいてね、って
頼もうモノなら
空いてるスペースに
適当に貼ってしまうだろう。
片づけとは
「空いてる隙間に
モノを詰め込んでいるサマ」
ママの辞書には
そう書いてあるに違いない。
それでも
介護ヘルパーって
お仕事が続いていたのは
ひとえに
このアッケラカンと
こだわりのない性格が
愛されているからだと思う。
元にあったモノを
元に戻すのが苦手なママ。
セイと私の洋服も
ごっちゃに
タンスの中に詰め込んでいて
幼い頃は
よくセイが
タンスを開けては
せっせ、せっせと
詰め直していた。
セイは
単に几帳面なヤツなんだって
ずっと思っていたけれど
ちいさい頃から
随分といろんなコトに
気を遣っていたんだなって
今ならわかる。
「どれもこれも
かわいくて
永久保存したいの
ばっかりだわ〜」
ママが溜息を
ついているけれど
どれもこれも
セイの写真ばっかって…。