「セイなんか
どの写真も
ハンで押したみたいに
同じ顔で写ってるから
1枚で充分だと思うッ」
「ええ〜ッ!!」
ママが私のセリフに
ブーイングした。
「顔だって
ちいさい頃から
全然変わってないしッ」
「髪型とか洋服
背景だって全然違うわよ!」
当たり前だッ。
「トーコの写真は
失敗が多いけど
セイのはホントに
ピンナップにしたいくらい
いい出来の写真ばっかりだし」
…私の写真が
みんな変に写ってるのは
誰のせいなんだッ。
セイとふたりで
写真に写るときなんか
カメラはみんな
セイにピントがあってて。
シャッターを
押すタイミングも
セイの呼吸に合わせてる。
おかげで私の写真は
目が半開きなんて
いつものコトで。
赤目になってたり
セイの陰になってたり。
ボケて写ってたり。
それはもう
ボロボロの状態だった。
セイを基準にして
シャッターが押されて
いるんだって
その事実に気づくまで
自分の写真写りの悪さに
どれだけ私は
落ち込まされてきたコトか!
「小学生の高学年頃の
トーコの写真なんて
みんなふざけた顔で
写ってるのよね」
…ブスに写ってる自分が嫌で
カメラを向けられると
わざとヘン顔を
つくってみせてたりして。
「トーコのは
これがいいわ」
ママが
永久保存したい写真に
選んだ私の写真は
パパとママに挟まれて
3人で写ってる写真で。
「トーコの笑顔がとっても
かわいいでしょ」
確かに
自分で言うのも何だけど
…かわいい。
カメラを指さして
屈託のない顔で笑ってる私に
しっかり
ピントが合っている。
だけど。