ぷにぷにッ♂012


日曜日。

セイが朝から
キッチンに立っている。

セイは確かに
偏食傾向が強くって

好き嫌いが激しいけれど


だからといって

”食”に関して
あまり興味があるタイプとも
思えなかった。


「何作ってるの?」


セイがかき混ぜている
ボウルの中からは

何だか甘い匂いがする。


「プリン」


…私の問いに
勿体ぶらずストレートに
返してくるなんて

どういう風の吹き回しだッ。


何か嫌な予感がした。


…あんまり関わらない方が
いいよね。


私は冷蔵庫から
オレンジジュースを
出そうとして


ガッシャーン!


作業台の上にあった
バットに

ヒジを引っ掛けて
落してしまう。


「ごめ…」

あれ?


「こんなバット
家にあったっけ?」


セイは
私の問い掛けを無視して

かき混ぜ終わった液体に
中指を浸けて

味をみている。


「……」

セイの眉間にシワが寄る。


ヤバいッ。

セイの不機嫌に
巻き込まれないうちに…

その場を
退散しようとしていた
私のTシャツの首根っこを
セイが引っ張って。


「ほれッ」

味見しろって
でっかいボウルを
差し出してくる。


「もうちょっと
甘い方がいいか?」


セイは自分の人差し指に
液体をつけると

私に舐めてみろ、って

マジな顔で迫ってきた。


…セイが
私に意見を聞くなんて

天変地異の前ぶれかッ。


「……」


逆らうのもコワイので
取りあえず舐めてみる。