「…甘い香りの割に
甘くないかも」
「だよなッ」
セイが
持っていたボウルの中身を
勢いよく
排水溝に流してしまった。
「何も捨てなくてもッ!!」
「完璧じゃなきゃ
俺が作っている意味がない」
食材を無駄にするなんて
世界中の飢えている
子ども達に
申し訳ないとは
思わんのかああああ!
と、ココロの中で
ツッコむけど。
口には出せないッ。
だけど
「…セイ、何してるの?」
目の前で
繰り広げられている
セイの奇行には
ツッコまずには
いられなかった。
「それ
理科で使う天秤だよね…」
ピンセットで
バニラの種を丁寧に
取り出しては
「バニラ、適量なんて
不親切な表記しやがって」
セイは天秤に乗せて
重さをはかっている。
「あの…?」
タマゴも1個1個割っては
重さを細密に量ってて。
とてもお菓子作りを
しているなんて
思えないッ。
「あ、分銅に
素手で触るなよ」
調理台に並べられていた
どうみても
実験道具にしかみえない
それらを手に取ろうとして
セイに横目で
威嚇された。
「…これってビーカーに
メス何とかだよね」
「メスシリンダー」
「そう!
メスシリンダー」
「前回
テストに出てたのに
もう忘れたか」
「ぐッ」
テストなんて
嫌なコトを
思い出させるなッ。
「あんなに
マンツーマンで
勉強を教えてやったのに
40点に満たない教科が
2つもあったなんて…」
セイがイヤミったらしく
溜息をつく。