ぷにぷにッ♂013
昼下がり。
パパとママ
そしてセイに
特大プリンで
お誕生日をお祝いして貰って
「これからみんなで
映画を観に行かない?」
セイが
有効期限が今日までの
映画の招待券を
テーブルの上に出した。
…誕生日に家族揃って
映画なんて
何かセイって変わってる。
しかも
その映画が
アジアのB級
カンフー・コメディー…。
町はずれの
ちいさな映画館の
単館上映で。
「せっかくだけど
ママは
格闘シーンがある映画って
苦手だわ」
「まだママは
空気の悪いヒトゴミとか
出かけない方がいいかもな。
パパも会社の仕事
持ち帰ってるし…」
ママとパパが
早々に辞退を表明した。
「じゃ、トーコとふたりで
行ってくるから」
セイが私の返事を待たずに
決めつける。
「私もカンフーとか
興味ないしッ」
「ほら、ぐずぐず言わずに
着替えてこいよ。
招待券を無駄にする気か?」
セイにTシャツの背中を
引っ張られるようにして
私は自分の部屋に
押し込まれた。
「今日はムラサキのヤツが
気分だな」
って
セイは意味深に笑って
部屋のドアを閉めて
出て行った。
「…ムラサキのヤツって…」
下着の色のコト、だよね。
映画に行くなんてのは
大ウソで
本当は
誕生日に堂々と
ふたりで夜遊びできる口実が
欲しかっただけ
なんじゃないのかッ。
ママ達が苦手な映画を
わざわざチョイスしたりして
狡猾なやり口が
かわいくないッ。