ショーウィンドウに
映るふたりは

実に不釣り合いで。


繋いでいたセイの手を
離したくなる。


だけど

セイの手には
いっそう力が入って

その手を離させはしなかった。


駅の切符を買うときも
電車に乗るときも

ずっと手を離さなかった。


「お金、ポケットに
直接突っ込んだりしてて

高そうな洋服なのに
汚れちゃうよ」


「……」

何を話しかけても
セイはずっと黙ってる。


電車の中の銀色の手すりに
もたれかかるようにして

相変わらず
だらしのないセイだったけど


日曜日の夕方の電車の中

セイは
ヒト目をひかずには
いられない。


目深に被った帽子から覗く
美しいカーブを描く輪郭や

その魅惑的な口元は

それだけで充分
上質すぎだった。


「…トーコはさ。

俺といっしょにいるの
恥ずかしい?」


「えッ」


突然、セイに
話しかけられて

動揺する。


「俺といっしょに
出かけたがらないし

いっしょに出かけても
下向いてばっかでさ」


「…そんなコト、ないよッ」


私はおどけるようにして

セイの帽子を
さらに目深に被せた。


「迷惑ならそう言えよ」


セイの口元がちいさく動く。


「別に迷惑だとか
そういうんじゃなくて」

「どういうの?」


「……」


答えに詰まった。


「ほら、映画館の看板が
見えてきたよッ」

話題を逸らせて


「2番出口だったよね?」


私は
ひとりで話を繋いでる。


セイを引っ張るようにして
駅の階段を駆け降りた。