「離してよッ」

私は座席の足元に
這いつくばった。


「大声出してると
また注目されるぞ」


「いいモンッ!

何か咎められたら
トイレ借りに入って
間違えたって言うモンッ」


「…下半身
ハダカにするぞッ」


「……」

何を言い出すんだ
このサディストはッ。


どこまで本気か
わからないから

始末に悪いッ。


「また綿のパンツなんか
穿いてきてさ。

ホント信じられないよな」


セイが
ショートパンツを
掴んでいた手の
人差し指で

パンツのゴムを
パツン、と弾いた。


「ムラサキのヤツは
どうした?」

「……」


スカートが
ムラサキです、なんて
言ったら

私、殺されるよね…。


「…いい度胸だ。

ウチに帰ったら
トーコの綿パンは
みんな俺が処分してやるッ」


「……」

どうして
私がこんな目にッ。


情けなくって
またナミダが出る。

「…誕生日なのに」

最悪だ。


私は狭い座席の床に
オデコをつけて

ひれ伏した。


「…誕生日なのは
わかってるよ」

「わかってないッ」


「おい、静かにしろよッ」

「オンナの声じゃないか」


場内がざわつき出す。


「やっべ〜…」

セイが舌打ちして
帽子を目深に被り直した。


「ごめんなさ〜い♪

彼氏が
イタズラするモノだから〜」


セイのオカマ声が
場内に響いく。


私はセイの足元で
息をひそめた。