シンスケってば
何ていいヤツなんだあああ!!


「中に入ったら
トーコの姿、見失ってさ」


諦めて帰ろうとしたら


「トーコらしき声が
場内から聴こえてくるし」


「…トイレ借りに
入ったんだけど

トーコのヤツが
一度こういう映画を
観たいって

ダダをこねるモンだからさ」


げげげげげッ。

セイってば思いっきり
私に責任を
なすりつけてるうううう。


「だけどそれで
どうしてズボンが脱げて

床に這いつくばってたり
したんだ?」


「……」

セイが黙って
帽子を拾って被り直した。


「…トーコ、出るぞ」

シンスケの
ガタイのいいカラダを
押し退けるようにして

セイが通路に立っていた
私の手を取る。


「でも、セイッ」


ここはシンスケに

ちゃんと何か
言い訳をしておいた方が…!


「待てよ、セイ!」

映画館の
明るいロビーに出た
私とセイの後を

シンスケが
早歩きして追いかけてきた。


セイに声を掛けようとした
映画館のヒトに

「トイレ
ありがとうございました」

わざとらしいくらい
おおきな声で挨拶して。


「セイッ!!」

映画館を少し出たトコロで

私とセイは
シンスケに通せんぼされる。


「…今日は
トーコのバースデーなんで

遠慮して貰えますか?」


セイが映画館の中とは
打って変わって

にっこりとシンスケに
微笑みかけた。


「…おまえ達

姉弟じゃなく婚約者だって
本当なのか?」


シンスケがいきなり
核心をついてきた。