「…だって〜」


「トーコはさ。

俺とデートするの
そんなに嫌か?」


「だって…」


「”だって”は
もういいッ!!」


質問に答えろって

セイが至近距離から
ガンを飛ばしてくる。


「…だって…」


「次、”だって”って
言ったら

キスするぞ」


「……」

「ほら、言えよ!」


「……」

セイはホントに
自己中心なヤツだ。


「…セイはさ。

誰とでも
キスするんだよね」


「え?」

セイが私のセリフに
驚きの表情を浮かべる。


「私はッ

キスって
大好きなヒトとするモノだって

思ってる」


私は勢いに任せて
コトバを続けた。


「だから…!」


「…だから、何?」


セイの顔が
無表情になって

黒曜石のように
その瞳が鈍く光った。


「俺とは
キスしたくないって?」


「セイにも
他のヒトと気軽にキスなんか
して欲しくないッ」


私は本音を吐き出して


「…何だよ、それ」

今度は
セイが溜息をついた。


「あ〜あ」

おまえは本当に
何にもわかってないな、って
言わんばかりに

セイは
ドガッっとイスに座る。


「俺のカラダはさ

おまえの役に立つ為に
存在してるのッ」


え?


「キスひとつだって
安売りしてるつもりはない」


セイは窓の外の
夕陽に染まった街並みを

その瞳に映した。