「セイ〜!
ちょっと困ったコトに
なっちゃって!!!」

私はセイに手招きをする。


セイが
中に入ってくれれば

シンスケだって
もれなくついてくるハズで。


なのに。

「…何?」

私のコビの入った声に
警戒心を強めたセイが

身構えた。


「だから、ちょっとお〜」

「用件を言え!」

「ここでは言えないからッ」

「……」

…こういうときの
セイの勘の良さって

本当にイライラ
させられるッ。


「セイの言うコト
何でも聞いてあげるから〜」


「何でも?」

「何でもッ」


セイという
偏屈な野犬が
食いついてくる最高のエサ。


変なお願いをされたら
バックレてやるもんねッ。


「でも、俺
今、そんな気分じゃないしッ」


って

アンタねええええええッ!


「何でもしてあげるって
言ってるんだよッ

この私がッ!?」


「だって、トーコなんて
いつでも好きに出来るしな〜」


…どういう意味じゃッ!!!


「お客さま
入口を塞がれると困ります」


何の成果もなく

私は水族館の中へと
水族館のスタッフに
押し戻される。


私はトボトボと
ナンノの元へと歩き出した。


…セイなんて
ホントに肝心なトコロで
役立たずなんだからッ。


「どうしたの?
気分でも悪いのかな?」


え。

知らないオトコのヒトに
やさしく声を掛けられて

私は思わず顔を上げた。