ぷにぷにッ♂029


「トーコ、ちょっと待って」

電車から降りて
改札口に向かおうとしていた
私の腕を

セイが掴んで

引き止めた。


「化粧
凄いコトになってるから」

って

笑いながらセイは
私をホームのベンチに
座らせる。

「メイク道具は?」

「……」


「トーコが最近
持ち歩くようになったの

知ってるから」


セイは
私のバッグの中に
手を突っ込んで

私が忍ばせていた
化粧ポーチを取り出した。


「相変わらず
百均の化粧品ばっかだな」


セイが私の隣りに座って

手慣れた様子で
私のメイクを直していく。


「…みんな見てるんだけど」


美少年がオンナノコに
化粧を施している姿なんて

さぞかし
奇異に見えるのだろう。


電車を待つ人々も

チラチラと
コチラを窺ってくるモノの

露骨な視線を送る
度胸のあるヒトなど
いないようで。


…こうなったら
開き直って

コトが終わるまで
じっとやり過ごすのが
一番だよね。


私はセイに
言われるまま

目を閉じた。


「セイ先輩!」


セイ”先輩”!?????


その聞き慣れない響きに

私は閉じていた目を
思わず見開いてしまう。


「あッ、こら!」

ビューラーを手にしていた
セイが

私にクレームをつけた。


「どうしてメールに
返信すらくれないんですか!」


セイの前に立って

見覚えのある
白い学生服を着た少年3人が

懐っこくセイに
話しかけてくる。


「……」

セイは
彼らをチラリとも
見ようともしないけど。


…セイの学校の後輩?

制服のラインの色は
中等部の、だよね。