話しかけてきた声を
聞いただけで
誰だか
わかったんだろうけど。
名字ではなく
下の名前に
”先輩”ってつけるあたり
単なる後輩って
カンジでもない。
そう言えば
校医でもある
ねずみ〜らんどの先生も
「セイくん」って
下の名前で呼んでたけど
セイの学校では
下の名で呼ぶ習慣でも
あるのかな。
だけど
返事もせずに
セイが
無視してるってコトは
何か嫌な想い出でもある
相手なのだろうか。
…キレイな靴。
3人とも
電車を使ってるヒトの
足元なんかじゃない。
「先輩…。僕達はッ」
思いつめたカンジのその声に
私は初めて
その少年達の顔に
視線を上げる。
…お。
なんてかわいい美少年ッ。
私は思わず
3人の真ん中にいた
少年の容姿に
釘づけになってしまった。
その輪郭に
まだあどけなさが残る
その少年は
短かく髪を刈り上げていて。
おっきな黒目がちな目が
印象的な
凛々しい日本男児的な
風貌をしていて。
…剣道着とか似合いそうだ。
不健康なセイとは
まるで正反対。
「あのときのコトは
忘れてくださいッ。
本当に反省してるんです」
まさか先輩が
学校をやめてしまうなんて
思いもしなかったから、って
土下座でもしそうな勢いで
その少年は
セイの足元にすがりついた。
「…行くぞ」
セイがベンチの上に
散らかしていた化粧品を
乱暴に私のバッグの中に
剥き出しのまま
乱暴に詰め込んで
私の手を引いて
足早に歩きはじめる。