「え、だってッ!?
あのオトコノコッ」


ベンチに取り残されている
少年を振り向きながら
確認している私を

「いいからッ!!!」


セイが一喝した。


「……」

何か
ワケありっぽかった
けれど。


セイの眉間に
寄っているシワが

「その話には触れるな」って
言っていて


…ちょっとコワイ。


夕暮れの商店街を
セイと手を繋いで
歩いているのに。

こうも不機嫌丸出しで
黙っていられるのは


拷問に限りなく近かった。


…あの子達の話題は
タブーだとしても

他の話題を出すのは
もっとわざとらしいよね。


「……」

「……」


学校に通っていたとき

何かトラブルでも
あったのかな。


そう言えば

セイの交友カンケイって

いっつも
ひとまわり以上
年の離れた
オトナばっかりだったから

何か違和感。


セイだって
ふつうの15歳で。


ふつうに
学校に通ってたんだから


同い年くらいの
友達なり知り合いが

もっと周りを賑わせてても
おかしくはないハズなのに。


…もしかして
セイって

同じ年頃の子とツルむのが
苦手なのかな。


だったら
今日の水族館なんて

凄く気疲れしたんじゃ
ないのだろうか。


「トーコ、俺
ちょっと
コンビニに寄ってから帰るワ」


セイが私の背中を押し出して

ふたりマンションの下で
別れる。


…だとしたら

つき合ってくれて
ありがと、ね。

セイ。



私はセイの後姿に

そっと声を掛けた