「あれ、セイは?」
玄関に私を
迎えに出てきてくれたママは
いっしょに水族館に
行っていたハズの
セイの姿が見えないコトに
顔を曇らせる。
「ケンカでもしちゃったの?」
「やっぱり食べ物のコト!?」
「それともママ達が
ドタキャンなんか
したからッ!?」
靴を脱ぐ私に
ママが矢継ぎ早に
質問を浴びせてきた。
「セイはコンビニで
買うモノがあるんだって」
マンションの手前で
別れたんだって説明すると
「じゃ
落ち込んでいるワケじゃ
ないのねッ!?」
ママの
みょ〜な心配の仕方が
引っ掛かる。
「…どうして?」
「いや、別に、ねッ」
ママが何もないのよ、って
言わんばかりに
私の後を歩いていた。
「おかえり。
あれ、セイは?」
リビングで新聞を読んでいた
パパまでも
訝しげな顔をして
私を見る。
「セイはコンビニに
寄ってるんですって」
ママが私の代わりに
パパに答えた。
「トーコ
手を洗ってらっしゃい。
じきに晩ゴハンだから」
テーブルの上を見ると
セイが未練たらたらだった
刺身が並んでる。
「…ママ、いったい
これは何のジョークかなッ」
「だって水族館
お刺身なかったんでしょ?」
…パパが
ママに教えたのかな?
私は
パパに視線を向けた。
「あ、いやッ。
別にッ、ふたりのデートが
気になってたワケじゃ
なくて、だな」
「……」
私とセイの
水族館でのデートを
想像しながら
ふたりで
盛り上がってたんだろうか。
私はバッグと
汚れたぬいぐるみを
パパの隣りに置いて
洗面所に移動した。
トイレに入ると
便座が上に上がっている。
パパの会社のヒトが
オトコのヒトで
さっき帰ったばかり
なんだろうって
推測はできた。