晩ゴハンの支度をする
時間が
なかったから
今夜の我が家のメニューが
お刺身になったのかも
しれなかったけど…。
いくらセイが
食べたがっていたとはいえ
かわいいお魚さん達と
交流してきたその直後に
刺身はないと思う。
「……」
鏡に映った自分と
目が合った。
駅のベンチで
セイが直してくれた
私のお化粧。
家を出たときよりも
私、数段かわいくなってる。
…お昼に近かったとはいえ
午前中のセイは
機嫌が悪めだったから
メイクなんか
とてもじゃないけど
頼めるカンジじゃなかった。
「パパもママも
私が自分でしたんじゃ
ないって
気づいてるだろうな…」
突っ込まれたら
ナンノにやって貰ったって
誤魔化そう。
私は
メイクを落とし始める。
何かちょっと
勿体ない気もするけれど…。
帰りに
駅前のスピード写真にでも
寄って
セイとふたりで
カメラに
収まればよかったかな。
…今更
後悔しても遅いけど。
水族館の中は
撮影禁止だったから
ケータイにも
今日の楽しさを
残せなかった。
「水族館のプリクラも
野生の少女が占領していて
傍に寄れなかったし…」
私は
思い出し笑いをしてしまう。
シンスケとプリクラを
撮りたがっていた
ナンノ。
プリクラに近づけない
セイ。
セイの傍から離れたがらない
シンスケ。
野生の少女の保護者に
立退き交渉を
ナンノとふたり
願い出に赴いたのだけど。
結局は
ナンノが
ヒメミヤ・ジュンイチ氏と
プリクラを撮って貰って
立退きの件を
うやむやに
されてしまったという…。
もっとも。
プリクラ撮れなくて
誰よりも残念がってたのは
ナンノではなく
シンスケで。