ぷにぷにッ♂018
その店は
今にも崩れ落ちそうな
古くて汚いちいさなビルの
地下にあった。
階段についているのが
足元を照らす
黄色いフットライトだけで
頼りなかった。
壁には
ジャズシンガーのライブを
告知するポスターやら
貼り紙やらが
汚く重ね貼りされている。
その上でタバコを
もみ消した跡なんかがあって
…行儀のいいお客なんて
いそうにないよな、って。
セイに
手を引っ張られながら
階段を降りる足取りも
自然と重くなった。
お好み焼きなんかは
汚い店ほど
美味いなんていうけれど
…これは意味が違うよね。
真黒なごっつい鉄のドアを
セイが押すと
店の中から
音楽が聴こえてくる。
ひとり通るのがやっとの
通路の奥に
ドラムを演奏する
蝶ネクタイのヒトが見えた。
「ハ〜イ、セイ!」
右側のカウンター席に
座っている
西洋人のオトコに
声を掛けられて
「ハ〜イ」
セイも
ハイタッチに応えてて。
左のテーブル席の
ミニスカートの
おっぱい美人達にも
セイは愛想を
振りまいている。
「…外国人ばっかだね」
私はこの雰囲気に
とてもじゃないけど
馴染めそうになかった。
奥に進むと
そこは
ちいさなステージに
なっていて。
「このフィリピンのバンド
結構、巧いんだよね」
なんて
セイは
わかった風なコトを言う。
フィリピンバンドの
真っ正面のテーブル席に
座らされ
…こういう場所って
演奏中は静かにしなきゃ
いけないのかな。
緊張にカラダが
固くなってしまう。
この音楽はジャズだろうか。
…クボ先輩が好きだと
言っていた曲に
ちょっと似ている。