ぷりんちゃん達に
セイが早口の英語で
何か言ってて。


ドキドキした。


…私の悪口でも
言ってるのかな。


ぷりんちゃん達が私を見て

指さしては

「オーマイガーッ」

って

お手上げだわって
言わんばかりのポーズで

次々と席を離れていく。


「ハッピー
バイオレンスガール」

って英語だけは
かろうじて聞きとれたけど。


…バイオレンスガール

暴力少女、ってッ。


ヒドイ言われようだった。


「私が英語苦手なの
わかってて…」

「トーコが苦手なのは
英語だけじゃないだろう」


セイがテーブルの下

長い足で私のイスを
蹴り飛ばす。


くやしいいいいいいいッ。


「私だって
頑張って英語話せるように
なってやるからッ」


「じゃ、これから毎晩
俺が英会話の特訓してやるよ」


「毎晩て…」


何か嫌な予感をさせる
響きだ…。



「英会話をてっとり早く
上達させるには

ピロートークで
会話を磨くのが一番」


「ピロートーク?」


私の問い返しに

くっくっくと
マスターが笑いを堪えてる。


「ピローってマクラのコト」


ピロートークって言うのは

寝物語り

つまり

「にゃんにゃんした後の
ベッドでの愛の語らい…」


お節介なマスターの解説に

思わずこの場で
気を失ってやろうかと
思った。


「セイちゃんも
エイミーやキャサリンの
おかげで

上達、早かったもんね〜」


マスターの視線の先

ぷりんちゃん達が
ちいさく指を動かして
こっちの視線に応えてて。


…アンタ達が

エイミーに
キャサリンだなッ。


オンナの勘を
ナメるでないッ。


「セイが
お世話になってました」って

ここはオトナに
なるべきなのかッ。


「…トーコ。
おまえ、目つき恐いんだけど」

「何ッ!?」


セイのツッコミに
噛みついた瞬間。

店内のライトが消えて。


「な、何ッ。停電ッ!?」