…ママがいるんだから
無茶なコトはしないよねッ。


「セイ、許してあげなさいよ」

ママの援護が
ありがたいッ!!!!


「……」

ママの和解勧告に

セイは黙って
自分の落書きされた掌を
また見つめ出したと
思ったら


「えッ!?」

その掌に
マジックを走らせてる
ではないかッッ!!


キュコ、キュコ、キュコ。


「あら、それって
どこぞのテレビ局のマークね」

セイの掌を覗き込んだママが
大ウケしている。


…セイらしからぬ落書きが

かえってコワイ。


「トーコはまだまだ
オコチャマだから

ヒトの嫌がるコトを
平気でしちゃうんだよね」


セイが
切なく目を伏せる…。


「そうね。

トーコも
もう少し思いやりの気持ちを
持った方がいいわよね」

なんて


ママの同情を
思いっきり引いていてッ。


セイの方が
よっぽどヒドイコト
私にしてるって

ノドまで出かかったッ。


…ママは本当に
わかってないんだろうか。


入院中も退院後も

ママは取り立てて

私とセイのカンケイを
確認したりは
してこなかった。


ママとパパは
お互いが隠しゴトをしない

いわゆる会話の多い
仲良し夫婦だ。


私とセイのコトが
耳に入っていないなんて
考えられなかったけれど…。


「ママって
けっこう天然入ってるトコ
あるからな〜」


パパから聞いていても
耳から通り過ぎている
可能性もある。


「誰が天然だって?」

洗面所で
歯ミガキしていた私の
背後から

セイが静かに現れた。