「あ、いやッ、ママのコトッ」

私は笑って
セイの応対をする。


「ふ〜ん」

セイは私の手から
私の使っていた歯ブラシを
取り上げて

自分の歯を磨き出した。


「きったな〜い。

横着せず
自分ので磨きなさいよッ」


「トーコの口の中
汚いって自覚があるんだ?」


…いちいち
気に障るヤツだッ。


私は口の中を
念入りにゆすぐ。


「…ママってさ。

私達のコト
パパから
聞いてるんだよね?」


ちょっと
セイに確認してみた。


のに。

「…さあ」


「さあ、って、何ッ!?」

どういう意味だッ。


「…母さんにも父さんにも

確認した覚えとか
ないからな」


セイが
私からコップを奪って
口をゆすぐ。


「…確認しておいた方が
いいんじゃないのかな」


何か
すんごく不安になってきた。


パパは以前
ねずみ〜らんどのホテルで

セイに

ママが私を
セイと結婚させたがっている
みたいなコトを
口にしていたけれど。


「もし、知らなかったなら
自分だけ知らなかったなんて
わかったら…」

ママ、ヘソを曲げないかな。


「…そのうち
機会を見て
父さんにでも確認してみるよ」


私のパジャマの肩先で
自分の口元を拭いて

セイは洗面所を
立ち去ろうとした。


「ちょっと待ったッ!!」


私はセイの掌の
異変に気づく。


「セイ、アンタ
その手を見せて!」

「…何?」


「しらばっくれて
るんじゃないわよッ。

私が描いた魚の目よッ!!」


「……」