「引き立て役?」
私のコトバの選び方が
セイには
気に入らなかったらしく
セイのマジな目がコワイ。
「…俺って、今日は
ヒールな悪役に
徹してればいいワケ?」
ヒールな悪役って…。
どこまで
プライドが高いんだッ。
「ナンノちゃんの弁当で
腹壊さずに済んだぞおおお」
叫ぼうとするセイの口を
私は慌てて両手で塞ぐ。
ゴオオオオオオオ。
特急電車の通り過ぎる音に
セイの声が
かき消されたのは
ラッキーだった。
「…何故、邪魔をする!?」
「……」
セイと話してると
ときどき
小学生なんかを
相手にしているかのような
錯覚に陥ってしまう。
「セイ、トーコ!
水族館行きは
反対のホームだぞ」
シンスケの声に
ふたり振り向くと
階段の脇で
シンスケの斜め後ろに
ナンノが
遠慮がちに
寄り添っていて。
「シンスケ〜。
ナンノは今日
カカトの高い靴履いてるから
階段、転ばないように
エスコートしてあげてよ〜」
何とか横に並ばせて
手を繋いで貰えれば
御の字なんだけど…。
なのにッ。
「新体操部のキャプテンだぞ。
バランス感覚は
他のヤツより優れてる」
って。
シンスケってば
自慢げに
「なッ?」なんて
ナンノに
微笑みかけていて。
…体操バカッ。
ナンノだって
複雑な顔して
微笑み返してるじゃないかッ!
こういうときは
やっぱり
「バランス感覚がいいのと
ヒールの高い靴で歩くのでは
ワケが違うよね」
そうそう、そのセリフで。
って
「おいいいいいッ!!!!!」