「この島はね。

ちょっと
特殊な地層をしていて

掘ればいろんなモノが
でてきますよ」


「えッ」


「先代の…
セイくんのおじいさまの
時代には

本土からたくさんの
企業が入ってきて
それはもう賑やかな土地
だったそうですよ」


「……」

何だかアタマの中を
読まれたようで
恥ずかしい。


「その当時の財産は
資産運用され

今ではその資産も

ちょっとしたちいさな国の
国家予算並みの金額にまで
膨れ上がってますよ」


…国家予算、って。


数字が苦手な私にだって

それが
とてつもないコトなんだって
さすがにわかる。


「…からかわれてるって
気づけよな」

セイが私のヒザに
ツメを立てた。


「えッ。ウソなんですかッ」


「当たり前だろ。

資産状況なんて
弁護士がペラペラと
他人にしゃべるかよ」

って

セイが代わりに答えてる。


「あはははは。

話は半分だと思って
聞いておいてください」


弁護士さんが
無責任に笑っててッ。


…でも。

セイが車に乗ってから
初めてしゃべった。


セイは面倒臭そうに
カラダをまた起こして

窓を開けた。


「セイ、寒いよ」

「……」


セイが私のカラダを
乱暴に抱き寄せる。


「…カトーさん。

ばあさんってさあ。
10年前、何で倒れて
寝たきりになったの?」


セイが

バックミラーに映っていた
弁護士さんの顔を

キツイ目で凝視していた。


「…階段から落ちて
骨盤を骨折されたのを
きっかけに…」

「それも
話を半分にして
聞いとけばいいんだよね?」


「……」