車の中で
気まずい沈黙が続く。


「…窓、閉めようね」

私はセイのカラダを
乗り越えて

窓ガラスを閉めた。


「あ、こらッ」

セイが私のカラダを
両手で拘束して。


私はセイのヒザの上で
必死でもがく。


「カトーさんはさあ
トーコと俺のコト

聞いてるんでしょ?


もう先方には
伝えてくれてるの?」


「……」

「その様子だと
話、半分だけ伝えてるって
カンジだね」


…さっきから

セイは
弁護士さんに対して
ずいぶん挑発的な
モノ言いをしているけど。


面識、あるのかな。


「お嬢さまの耳には
入れない方が賢明かと…」


「お嬢さまって…」

若いオンナノコを
想像して

私は思わず身構えて
しまったのだけれど


「俺の叔母さんにあたる
ヒトだっけ?」


セイのパパの実の妹…。


両親を亡くして

引き取り手もない
天涯孤独の
子どもだったのだとばかり

思い込んでいたから


次々に出てくる
登場人物に
違和感を覚えてしまう。


「着きましたよ」

あ。


車から降りると
目の前には

見るからに古そうな日本家屋。


中学のときの
修学旅行で見た酒蔵に

何だか似ていた。


遠く
玄関らしいトコロから
こっちにむかって

袴を穿いた和服の少年が
駆けてくる。


時代をタイムスリップでも
したかのような

その出で立ちは

まるで
明治時代の書生のようで。


あれ、このオトコノコ
どこかで…。


「セイ先輩ッ!」


えッ。あ。