「ああああ〜〜〜〜!!!」
水族館の帰りに
駅のホームで会った
セイの学校の後輩の
中学生だッ!
「おばあさまが。
おばあさまが…!」
うわわあああああん、と
その少年は
セイに抱きつきながら
おおきな声で
泣き出した。
…あの?
セイが呆れた顔して
抱きついてくるその少年を
抱き止めようともせず
空を見ている。
「何の騒ぎかしら」
植え込みの中から
グレーの着物に黒い帯をした
女性が現れた。
「お嬢さま」
弁護士さんが
そう声を掛けたそのヒトは
色白で
真黒な髪をひっつめていて
よく言えば
日本人形。
ハッキリ言えば
柳の下にでも出てきそうな
線の細い
はかなげな容姿をしていた。
「カノンさん。
何ですか
玄関先で
みっともない」
「お母さま…」
セイの胸にすがり泣いていた
少年は
そのヒトを母と呼んで。
母親から身を隠すようにして
セイの後ろに
逃げ込もうとする。
「お嬢さま
このお方が…」
シンドウさんが
セイと私を紹介しようとして
「セイでしょ。
あのオンナに
ホンット
嫌味なくらい生き写し」
叔母さんは
さっさと私達に背を向けて
屋敷の中へ消えていった。