「…そろそろ弔問客も
お見えになる頃なので」
弁護士さんに
喪服に着替えるように
促される。
「お葬式って
玄関に提灯とか
置かないんですか?」
こういうのって
いわゆる密葬ってヤツ
なのかな。
「こちらの玄関は
勝手口になりますので」
こッ、このでかい玄関が
勝手口だとなあああああッ。
ウチのマンションの
エントランスより
よっぽど広いぞッ。
「その格好で
正面玄関から入られますと
悪目立ちされますから」
いわゆる配慮、ってヤツで
私達は勝手口に
通されたワケで。
けっして
歓迎されていない客人では
ないんだって
思いたいッ。
「セイ先輩。
離れにある僕の部屋を
使ってください」
あそこなら
親戚の誰とも
鉢合わせしませんから、って。
カノンくんとやらッ
その気遣いに
深い意味は
ないんだよねッ。
セイの腕を取って
嬉しそうに植え込みの奥へと
連れていくけれど。
「…さっきまで
セイの胸にすがって
泣いていたのに
この変わり身の早さは
何なんだッ」
「トーコさまは
こちらのお部屋を
お使いください」
弁護士さんが
私の荷物を持って
セイ達とは
反対の方角に歩き始めた。
「あ、私は
セイと
いっしょの部屋でいいです。
お気遣いなく…」
「そんなワケには
まいりません」
弁護士さんの足が止まった。
「ここでは
セイさまとの間に
ケジメの一線をしっかり
引いて戴きますように」
「……」
黒い孤島。
ここには
私達ふたりの理解者など
ひとりもいないんだって
私達はもっと早くに
気づくべきだった。
冬の森、眠らないキミ
黒い孤島編
≪〜完〜≫
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