「おもしろいモノ
いっぱい見つけたぞ」
セイが古い冊子を
私に見せてきて。
「同人誌?」
表紙もペラペラの
文字だらけの本…。
勉強嫌いの私にとって
一番の天敵だッ。
「セイ先輩の
お父さまが書いた小説が
載っていますよ」
「えッ!?」
…セイのパパは
小説なんか書いてたんだ。
私は目次の中に
セイのパパの名前を探す。
「この小説が
そうなんだってさ」
セイが指をさした
小説の作者の名前。
「レン…?」
「蓮の花が好きだから
そのペンネームを
使っていたみたいですよ」
花の名前を名乗るなんて
随分ロマンティックな
パパだったんだ…。
「ウチの母は
セイ先輩のお父さまを
尊敬していたから
僕もカノンなんて
オンナノコみたいな名前を
つけられて
しまったんですよね」
「???」
「蓮の花は咲くときに
ポンって音がなるからな。
花の音と書いて
カノン、なんだろ」
「へえええええッ」
セイの補足説明で
やっと意味がわかった。
「だけど
この本を見せたコトや
伯父さまが
小説を書いていたコトは
他のヒトには
ナイショにしてくださいね」
え。
「この家では
俺の父親は
勘当されたバカ息子だから」
セイが嫌味たっぷりに
毒を吐く。
「…そういう意味では」
カノンくんが
また困った顔をして。
…生真面目な子なんだな。
そう思った。
部屋もキチンと
片づいていて。
ポスターひとつ
貼ってない。