カレンダーも
地元の警察署のヤツで。
本棚には
卒業アルバムに
百科事典に辞書。
雑誌のひとつも置いてない。
CDもないなんて…。
「カノンくんは
今はここに住んでないの?」
「ああ、学校の寮に
入ってますから」
…そうだよね。
セイと同じ学校だもん。
こんなトコロから
毎朝、通えるハズは
ないよね。
「セイの通ってた中等部って
私物の持ち込み
たくさんできるんだ?」
「娯楽に関するモノは
一切ダメだったよな」
「ええ、ラジカセとか
ケータイもダメなんですよ」
「……」
…もしかして
趣味のないヒト???
それとも
ヒトに言えないような趣味を
隠し持っているとかッ!?
机に中に
隠し扉に…?
イケない想像が
アタマの中を駆け巡るッ。
「そろそろお時間なので
母屋の方へ…」
突然、奥の襖が開いて
ビックリした。
「…トーコさん。
姿が見えないと思ったら
こちらに
いたしてたんですね」
弁護士さんが
私の姿を見て苦笑する。
「カノンさまが
若い女性を
お部屋に引き入れたと
知ったら
お嬢さまが
卒倒されますよ」
「…すぐに
出ていきます、ですッ」
私は持っていた
セイのパパの小説を
後ろに隠した。
「もうお式が始まりますから」
このまま
移動しましょうって。
…困ったぞッ。
フスマのトコロに
立ったまま
弁護士さんが
私達を部屋から出るよう
促してくるッ。
こんなモノ
その辺に置きっ放しに
しておくワケにも
いかないし…。
「……」
私は
コートを取るフリをして
小説をコートで
隠すようにして
部屋から持ち出した。