カノンくんの部屋に戻ると


「どこで油、売ってたんだよ」


マフマフつきの
ミリタリージャケットに
ジーンズに
ニット帽という

まさに
今すぐ帰りますと
言わんばかりの出で立ちの
セイが

待ちくたびれていて。


「トーコも早く
帰る支度をしろよ」

「あ、うんッ」


「ダメですよ、先輩ッ。

明日の遺言状の公開に
同席して貰わなくては…!」


カノンくんが
セイの荷物を取り上げる。



「…ほら、荷物かえせよ。
コレやるからさ」


セイが
パパから預かっていたお香典を

無造作に
カノンくんの机の上に
投げ出した。