マズいッ!
この部屋に入ってくるッ!!
私は
そこら辺に散乱していた
腰紐やら帯枕やら
帯揚げやら
とにかく手に触れたモノを
抱え込んで
押し入れの中に
セイを無理矢理
引き込んだ。
「あッ」
部屋に入ってきたらしい
女性の声がハッキリと
聞きとれる。
「どうかしたの?」
その声にもうひとり
女性の声が加わった。
「まあッ、この惨状は
どうしたコトかしら!
だらしない!」
「申し訳ありませんッ。
すぐ積み直します」
私が雪崩させた座布団の
コトで
誰かが
叱られているなんて。
「……」
押し入れの中
息を殺しながら
私は思わず手を合わせる。
その瞬間。
シュッと
衣擦れの音がして。
「…ッ!!!!!!」
とんでもない
自分のミスに気がついた。
帯の先が
押し入れのフスマに
挟まっているううううう!
…こういう場合。
そっと引っ張って
中に引き入れるか。
そのまま
見つからないコトを
神様に祈るか。
…部屋の中は暗かったけど
廊下からの灯りで
帯はどんな風に
見えているのか。
どうしよう。
私はセイの顔を見た。