「…着せ方なんか
知らないクセに」

「脱がすときに
構造は理解できた」


障子から
微かに入ってくる灯りに

自信家のセイの
クールな顔が

ハッキリと見て取れる。


「……」

晴れたり曇ったり。


この土地の天気のように

セイの
この気まぐれさには

毎度毎度
振り回されっぱなしだった。


「…お式、終わったから
喪服はいい」


私は
カラダに巻きついていた
着物を解いて

制服と髪の毛を整える。


その横で

セイが
私が脱ぎ散らかした着物を
几帳面にたたみ出して。


「…着物のたたみ方なんか
知ってるんだ?」

すっごい意外。


「中学の体育で
柔道や剣道は

まず道着のたたみ方から
習うからな」


…超のつくエリート校は
教えるコトが違うッ。


「……」

私はポケットから
靴下を取り出して

セイに背中を向けて
靴下を穿こうとした。


「トーコってば

靴下ひとつ
色っぽく履けないのな」


「……」


何で靴下ひとつ穿くのに
そんな気を遣わなくちゃ
いけないんだッ。


「暗闇の中
若い男女がふたり」

俺のコト
奮い立たせるよう
誘ってみせろよ、って。


私の正面に回り込んできて

立てていた片足の
足首を

セイが掴む。


私の足元に
じゃれつくようにして

ニヤケながら
私の顔を覗き込んできた。


「…誘うつもりも
ございませんからッ」