私は足元に
まとわりついていた
セイを
邪険に足蹴にして
部屋を出ようと
フスマを開ける。
「えッ」
部屋の前には
カノンくんが立っていてッ。
私より少し背の高い
カノンくんの顔と
至近距離で
顔を突き合わせてしまった。
「え、あ、あのッ、あのッ」
カノンくんと
視線を外せずに
私の額からは
汗がボロボロと落ちてくる。
「……」
カノンくんは
無表情のまま私を
見つめているのだが
この表情は
いったいどういう風に
解釈すればいいのだろうか。
「あう、あう、あうッ」
ああッ。
コトバが出てこないッ。
ってゆ〜か
何を言えばいいのかさえ
わからないいいいいッ。
固まる私の横を
何もなかったかのように
セイが
知らん顔して
ひとり廊下に出ようとして
「セイ先輩!」
カノンくんがセイを
呼び止めた。
カノンくんの視線縛りから
解放されて
私は思わず息を吐く。
「…何だ?」
セイが冷やかな顔で
振り返ると
「せっかくここまで
足を運んでくださったのなら
せめてお焼香くらい…!」
すがりつこうとする
カノンくんの腕を
振り解いて
「…俺、この家には
そんな義理はないから」
セイは廊下を
ひとり進んでいった。
…セイの気持ちは
わかるけど。