パパやママ達の
立場もあるんだし

形だけでも参加して…。


…なんて

セイに
世間の常識なんて
説いても無駄だよね…。


私の心配など
気にもかけずに

廊下の向こう

セイはさっさと消えていく。


だけど


「…あのッ。
私は
お焼香させて貰いますッ」


「……」

カノンくんが
意外そうな顔をして

私を見た。


「別に…構いませんけれど」

って。


迷惑そうにされたのは
気のせいでしょうかッ。


私はカノンくんの
後ろについて
廊下をしずしずと歩いていく。


「……」
「……」


もしかして
カノンくん

私とセイの会話を
ずっとあそこで
聴いていたんだろうかッ。


セイのコト
慕ってたみたいだしッ。

セイの変態性を
目の当たりにして
ショックだったとか…。


だけど。


カノンくんって

以前、セイが駅で
私にメイクを施していたのを
見ても

動揺した素振りも
なかったよね。


今のだって

ふざけ合いっこ
してたとか

好意的に考えては…。


「…あのッ、カノンくんッ」


「……」


やっぱり
貰えてないみたいで。

私の呼びかけに
セイに負けないくらいの
冷たい瞳を向けてくるッ。