「あのねッ。

パパからの電話を切った後
この屋敷で
迷子になっちゃって

そのとき
声を掛けてくれたのが
カトーさんで…」


私は必死で
自分の不用意なひと言を

取り繕った。


のにッ。


「そんな言い訳なんか
興味ないッ」


ひええええええッ。


セイの目がマジすぎて
コワイッ。


「妙な言い伝えで怪我人って

何の話だ?」


セイが恐い目で
詰め寄ってくるッ。


「あ、いや。階段の下に…」


私はセイに

絶やしてはいけない線香の
話を聞かせた。


「…セイの
おばあさんのコトなのに

黙っててごめんなさい」


忘れてたって
ワケじゃなかったけれど


言い出すタイミングが
なかったし

って

言い訳するのも
申し訳なくて

私はガックリとうな垂れる。


「…その線香って
こんな匂い?」


「え?」


セイが

窓に掛かっていた私の制服を
私に嗅がせた。


…あ。


「そう、この香り…!」


でも
どうして私の制服に?


「あのオバサン

その階段から続く通路から
この部屋にきたのかもな」


トントン、トントン。

セイが
部屋の塗り壁を叩き出した。


トントン、ポン。


「ここだ…!」